コラム
Column

vol.3:広がるリユース・リターナブル容器の輪

リユースシステムのさまざまな展開

text by 平野喬 (地球・人間環境フォーラム)

リユーストークupdate: 08-09-01

ペットボトルとびんのリユースにも脚光

球場内に掲示されたポスター

何度も使えるものは洗って再使用するリユースの取り組みが、再評価され、活動の輪を広げている。

今年は、リユースの活動に関して、大きな節目となる三つの取り組みが始まっている。一つは、リユースPETボトル推進ネットワーク研究会を2004年から立ち上げ、ペットボトルのリユースに向けて調査・研究を続けてきたパルシステム生活協同組合連合会(以下パルシステム)が昨年、横浜市、甲府市で実証実験を行い、「リユースペットボトルの取り組みが環境に配慮した取り組みであると確証が得られた」とする報告書を今年の3月に発表したことである(本誌2008年5月号参照)。

 

容器の開発、洗い方の研究、回収の方法などを5年間にわたって模索した結果、首都圏を中心に活動するパルシステムがリユースボトルの導入に積極的に取り組むことは、社会システムの変革にもつながる出来事だと思う。

 

同研究会の報告書によれば、日本のペットボトルの生産量は209億本・55万t(2007年度)で、日本人1人あたり年間174本(500m換算)も購入していることになる。この量は今後も上昇の一途をたどると予測されているが、リサイクル率は回収量全体に対して62%にとどまっているものの、処理費用は年間600億円と言われ、「資源化貧乏」と表現されるような実情だという。リユースボトルをわが国で根づかせるねらいは、本特集(9~10ページ)で小沢一郎氏が述べているように、「再使用文化」の復活をリードすることにあると思う。  二つ目は、本特集でも紹介されているリターナブルびんの「Rドロップス」の登場である(7~9ページ)。このびんは、20回使うと、二酸化炭素(CO2)の排出量がアルミ缶のリサイクル4分の1、ペットボトルのリサイクルの3分の1に抑えられるという温暖化防止対応型の容器である。

 

衰退する従来のびんの利用が、このびんの登場で大学生の熱烈な支持を受け、導入実験の現場となった首都圏の3大学では商品が瞬く間に売り切れ、容器の評判も「おしゃれ」「軽い」と上々だった。

 

Rドロップスの導入では、3大学で別の価格のデポジットを課し、返却率の差を比較するというユニークな調査が行われたが、中村秀次氏の報告にあるように、デポジットに関しては、消費者側にかなり弾力的な受け入れの姿勢があると伺えた。

 

野球場での初の試み

三つ目は洞爺湖サミット開会中に実現した野球場へのリユースカップの導入である。明治神宮野球場で行われたヤクルトと横浜の3連戦(7月8~10日)で、ソフトドリンクの飲用にリユースカップが使われた。環境省予算による実証試験だったが、プロ野球での導入は初の試みで、3連戦という、サッカーでは経験のない、集中的なリユースカップの利用である。

 

当フォーラムとカップのメーカー、洗浄業者、備品のレンタル会社のスタッフが参加して基本的な業務の運営に当たったが、何よりの不安材料は野球ファンにリユースカップの存在が知られていない上、サッカーファンほど環境問題に関心を持っていないのではという先入観があったことだ。もしそうだとすると、リユースカップの回収率が悪く、せっかくの環境負荷低減の取り組みが、返って環境に悪影響を与えることになってしまうからだ。

 

リユースカップは、使い捨ての紙コップとの環境影響評価の比較で、5回以上再使用することで、CO2、ごみ、大気汚染物質などの排出が減り、水や電気などの使用量も低減すると計算されている。そのため、回収率を90%以上に維持し、5回以上の再使用はどうしても確保する必要がある。サッカー場などではデポジット(預り金)制がとられている事例もある。

 

今回の神宮球場の導入では、事前の周知に時間がないことなどから、デポジット制の採用はしなかった。その代わり、球場、球団、売店、球場の警備、清掃などを担当している企業の全面的な協力により、ファンへの呼びかけ、アナウンス、ポスター、外野席にあるスコアボードでの告知など、情報提供をできる限りていねいに行った。

 

その結果、3日間で1,976個のリユースカップが使われ、回収数1,785個、平均回収率90.3%というまずまずの成績だった。デポジットなしで、初めての取り組みだったにもかかわらず、回収率が90%を超えたことは、ファンの多くがリユースの仕組みを知っており、環境配慮、もったいないとの思いから、抵抗なくリユースカップを利用、返却してくれたものと思う。

 

グローバルネット2008年8月号(財団法人地球・人間環境フォーラム発行)『特集』より抜粋

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